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最高裁判所第三小法廷 昭和34年(し)62号 決定 1960年1月26日

主文

本件特別抗告を棄却する。

理由

本件特別抗告の理由は、別紙特別抗告申立書と題する書面記載のとおりである。

記録によれば、山形地方裁判所新庄支部がなした本件押収物仮還付請求却下の裁判は、地方裁判所の一人の裁判官をもって構成する裁判所としての決定であるから、刑訴四二九条にいう「その他の裁判官がした裁判」には当らないものというべく、これに対する抗告審は高等裁判所であること昭和三一年六月一三日大法廷決定、刑集一〇巻六号八四七頁の趣旨とするところであり、これと同旨に出た原決定は正当である。所論引用の仙台高等裁判所決定は刑訴二四条二項による忌避申立却下の裁判に対するものであって、本件の場合には適切を缺き、判例違反の論旨は理由がない。

また裁判が迅速を缺き憲法三七条一項に違反しても、判決に影響を及ぼさないこと明らかであるから、原判決破棄の理由とならないことは昭和二三年一二月二二日大法廷判決、刑集二巻一四号一八五三頁の判示せるところであり、憲法三七条一項違反の論旨もまた右判例の趣旨に徴し理由がない。

その余の論旨はその実質において単なる訴訟法違反の主張をいでず特別抗告適法の理由に当らない。

よって刑訴四三四条、四二六条一項により裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 垂水克己 裁判官 島 保 裁判官 高橋 潔 裁判官 石坂修一)

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